日本臨床発達心理士会滋賀支部

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第12回日本臨床発達心理士全国大会「関係性を築き、支える臨床 発達支援の可能性」に参加してー自己理解のサポートと『つな ぐ』役割―
0

    武藤百合 ヴォーリズ学園こころセンター

    (臨床発達心理士/臨床心理士)

     

    2016年9月10日〜11日に大阪国際交流センターで開催された第

    12回日本臨床発達心理士全国大会に参加しました。私は現在、私

    立学園でスクールカウンセラー(以下SC)として勤務しています

    が、公立のSCに比べて義務づけられた研修の機会やSC同士の情報

    交換の機会がなく、自分自身で意識してその都度必要な研修会や学

    会に出席し、知識をアップデートし、専門技能のブラッシュアップ

    を図らなければなりません。臨床発達心理士の資格を取得して5

    が過ぎた所ですが、全国大会参加は今回で三度目となり、二年に一

    回のペースで参加するようにしています。心理職としては臨床心理

    士として活動していた期間の方が長く、自分自身、これから臨床心

    理士+「臨床発達心理士」としてどのように活動していくべきか模

    索中なので、日本中から臨床発達心理士が集まる全国大会は、最新

    の知識や情報を仕入れ、専門家としての視野を広める絶好のチャン

    スです。今回も第12回大会に参加し、第一線で活躍しておられる

    臨床発達心理士の方々の現場報告や調査研究発表を伺うことで、新

    たな知見を得たい、現場でより有効なサポート方法があれば是非取

    り入れたい、と考えていました。

     

    第12回大会のテーマは「関係性を築き、支える臨床発達支援の

    可能性」でした。心理職のサポート分野においては言うまでもな

    く、当事者とその周りの人々(家族など)との関係性の支援、当事

    者同士の関係性の支援、援助者と当事者の関係性の支援、など、

    様々な形での関係性の支援があります。そのテーマに沿って、シン

    ポジウムや実践セミナー、実践研究発表では、心理職が出会う様々

    な関係性が取り上げられていました。この雰囲気は私にとってはか

    なり良い刺激となりました。私がもともと心理職として最初の一歩

    の訓練を受けた大学院は、分析心理学や精神分析学の流派が優勢な

    所でしたので、「関係性を築き、支える」という視点の講義はあま

    り、否、ほとんどなかったのではないかと思います。その後、S

    Cが学校に派遣されるようになり、臨床心理士養成の大学院でも組織

    (学校や医療現場)への働きかけや、組織の見立て、リファーやコ

    ンサルテーションの重要性が強調されるようになりましたが、私が

    大学院生であった頃はまだまだ「クライエントの内的世界」を理解

    する(分析する、解釈する)ことや、C.ロジャーズの「傾聴」カウ

    ンセリングに関する教育が主流でした。そのような視点で全国大会

    に参加すると、臨床発達心理士の支援とは当事者の心を理解し、対

    話(+アセスメント)した上で、当事者を取り巻く環境に様々な形

    で働きかけていく(関係性を築き、支える)能動的かつアクティブ

    な役割を担っているように感じられました。そして、そのような役

    割は、近年虐待や貧困問題など、教育現場のみでは到底抱えきれな

    い困難ケースが増えつつある私立学園のSCにとっても、必要不可

    欠であると思われました。

     

    実践研究発表はA児童期(1)、E成人期、保護者への支援、C支

    援者の抱える課題に参加しました。以下、SCとしての私の仕事と

    直接関連のある発表を列挙してみたいと思います。

    A児童期(1)では、伊藤先生(北海道社会福祉事業団太陽の

    園)の発表「先天性・後天性の疾患や脳損傷に伴って発達の特異性

    を呈する児童医療・心理・教育の連携」から、先天性・後天性

    の疾患や脳損傷をもつ生徒を心理職として担当する上では、医療と

    の連携、発達・心理評価をした上での心理・教育的対応の継続が大

    切であることを学びました。他に、愛知県の施設支援に関する発

    表、NPO法人の相談支援事業に関する発表もあり、教育現場の連携

    先となる可能性のある現場の現状や課題について知ることができ、

    視野が広がりました。

    E成人期、保護者への支援では、柴崎先生(おかやま発達障害者

    支援センター)の発表「発達障害の特性を踏まえた若年支援機関と

    の協働プログラムの開発」が印象に残りました。発達障害者の就労

    支援においては、発達障害の特性を踏まえた形での体験の場が必要

    であるとの事でしたが、確かにSCとして発達障害をもつ生徒を支

    援していると、高等学校までは担任やSSW(スクールソーシャル

    ワーカー)、SCのサポートがあり卒業できても、就労で失敗して

    しまうケースが多く、高校生のうちから、就労を念頭に置いた自己

    の特性理解を促すサポートが必要であると感じました。他には、難

    波先生(発達障害支援サービスコモステARA)の発表「発達障害者

    の遠隔間接支援」より、来談意欲の乏しい引きこもり状態の当事者

    とその家族に対する支援方法として、メールによる心理カウンセリ

    ングが有効な場合がある事を学びました。

    C支援者の抱える課題では、坂上先生(飯田女子短期大学)の発

    表「教師およびスクールカウンセラーの生徒支援における意識:私

    立高等学校での特別支援教育に関する語りの分析より」が勉強にな

    りました。教師の生徒指導や教科指導上での支援スキルが特別支援

    においてどのように機能的か、SCから教師に説明することが重要

    である事を知り、今後SCとしてそのような点を意識しながら教員

    と連携していきたい、と思いました。

     

    実践セミナーはB-3「通常の学級において特別な教育的配慮が求

    められる子どもを支えるための関係性を築く取り組みー川西市にお

    ける臨床発達心理士を中心とした医療、教育、福祉機関による連携

    」とA-6「高等学校における発達障害生徒に対するインクルーシ

    ブ教育合理的配慮の観点からー」に参加しました。

    実践セミナー全体の参加を通して、やはり「自己理解支援」とい

    うのは殆どどの実践報告にも通底する重要な事柄であると感じまし

    た。勿論、大会のテーマである「関係性を築き、支える」という役

    割も強調されてはいましたが、その前提として、当事者の「自己理

    解」ができていなければ、他機関や他職種にリファーした所で、当

    事者にとっては「困っていないのに何のために行くのかわからな

    い」と、早々につながりが切れてしまうのではないかと思います。

    実際、私も高等学校生徒のSCをしていて、そのようなケースに遭

    遇することがありました。高等学校生徒の自己理解支援として、実

    践セミナーA-6で百生先生(富山県立となみ野高等学校)が報告

    しておられた支援の三段階(一次支援:すべての生徒の成長をめざす

    支援、二次支援:困難を抱えた生徒への集団の中での支援、三次支

    援:個別に「合理的配慮」を提供する支援)という考え方が非常に

    参考になりました。このように生徒の抱える困難に応じて段階別に

    サポートしていく視点はとても大切であり、より深い自己理解が可

    能になると思われました。

     

    大会最後のプログラムは日本で唯一の治療的里親、土井高徳先生

    (土井ホーム)の公開講演「困難を抱えた青少年の関係性を築き、

    支える:土井ホームの実践から」でした。土井ホームとは、現在の

    日本では珍しい、発達障害と児童虐待が重複したような深刻な発達

    上の課題を持つ青年を受け止めている養育の家(治療的里親の家)

    です。非常に興味あるテーマではあるものの、最終プログラムなの

    で正直少々疲労感があり、3時間という長丁場の講演で瞼を閉じず

    に聴いていることができるか、全く自信がありませんでした。しか

    し、そのような心配は杞憂に終わり、土井先生の話が始まると、そ

    の話術とお話の内容にグイグイ引き込まれ、あっと言う間に3時間

    が過ぎてしまいました。北九州市のディーン・藤岡(と、壇上でお

    っしゃっていました)土井先生のユーモア精神は素晴らしく、土井

    先生の話術にかかると、不思議なことに深刻な問題を抱えた子ども

    たちがどこかユーモラスで、可能性に満ちた可愛らしさのある存在

    に思われてきます。例えば、「ピッキングの達人少年」「バンパイ

    ヤ少年」「アスペ顔のジャニーズ少年」「お札を風呂場まで持ち込

    んでにらんでいた少年」など、土井先生のお話を伺っていると、凄

    惨な体験をしている少年たちが、虐待の被害者であり、(場合によ

    っては)犯罪の加害者である以上に、愛すべき個性やどこかユーモ

    ラスな特性をもった存在として浮かび上がってくるのです。土井先

    生の語り口から、土井先生がどんなにか「治療的里親」として、一

    人一人の少年を大切に育ててこられたかが伝わってきて、涙あり、

    笑いありの素晴らしい講演でした(また、途中で披露してくださっ

    た藤圭子の物真似歌声も素晴らしく、もう少し聴かせていただきた

    い程でした)。

     

    大会では「関係性を築き、支える」ことがテーマでしたが、私

    は、ユーモアほど人の心を和ませ、人と人との関係性を潤わせるも

    のはないと考えています。私自身、医療現場や教育現場で長年活動

    してきましたが、困難ケースを抱えて頭を悩ます時に、ふっと連携

    メンバーが絶妙のタイミングで冗談を飛ばし、疲れが吹っ飛ぶ思い

    をした経験があります。医療職や看護職、福祉職や教育職など職種

    が異なる者同士の集まりでも、(不謹慎でない)健康的なユーモア

    は連携の場を和ませ、メンバーの連帯感を強めるのではないでしょ

    うか。そのような意味で、私は、「心理職にも笑いのセンスが必要

    だ」と常日頃から考えているのですが、土井先生の卓越したユーモ

    アセンス満ち溢れるお話(屋内で火をつけてしまう少年に「シンゴ

    ジラ」を持ち出して説法されたエピソードなど)に思わず「お師

    匠!!」と呼びたくなる思いで耳を傾けていました。また勿論、土

    井先生の少年たちへの対応のコツ(「大切な事は小声で」「壊れた

    レコードのように同じ表現で繰り返す」「望ましくない行動の時は

    無視(望ましい行動の時はほめる)」など)は、とりわけ発達障害

    をもつ子どもの対応に関する非常に大切な知恵に満ちていると感じました。

     

    会場では、土井ホームの子どもたちの地域貢献活動や、子どもた

    ちの親孝行(スタッフの肩もみ)、料理手伝いの写真が映し出され

    ました。とりわけ、素敵な奥様による美味しそうな手料理の映像が

    印象に残りました。このような食事によって、愛情だけではなく温

    かい食事にも文字通り「飢えていた」経験をもつ少年たちの心と身

    体が、どんなにか満たされてきたことでしょうか。特に、「父」と

    赤いケチャップで少年が描いた(土井先生用)オムライスの映像は

    圧巻で、心に残りました。大会終了後、会場近くの「福島上等カレ

    ー」というお店でコクがあってスパイシーな美味しいカレーを食べ

    ながら、「好きなものを言ってごらん。好きなものを好きなだけ食

    べていいんだよ」という土井先生の言葉を思い出していました。土

    井先生は少年たちの誕生日には必ずこの言葉をかけるのだそうで

    す。誕生日に好きなものをお腹一杯食べてもらうことで、少年たち

    に(これまでの人生で剥奪されてきた)決定権と意志表明権を与え

    るとのことでしたが、確かに、自分で決めた好きなものを好きなだ

    け食べていると(私の場合カレーが大好物です)、「生きててよか

    ったなあ」と、この上ない幸福感で満たされます。こうした数々の

    取り組みは、24時間生活を共にする治療的里親だからこそできる

    事で、到底真似はできませんが、近年益々低下しつつあるクライエ

    ントの「日常生活能力」の向上を目指すカウンセリングを行う上で

    (特に24時間当事者と生活を共にしている家族の面接におい

    て)、非常に参考になると感じました。

     

    今回の大会では、「関係性」について様々な観点から学ぶことが

    できたと思います。また、「関係性を築き、支える」臨床発達心理

    士の仕事も、かなり明確にイメージすることができました。今まで

    臨床床発達心理士として滋賀支部の集まりや全国大会に参加する中

    で、臨床心理士として活動していた時期以上に、心理職のもつ可能

    性の拡がりを感じ、SCの仕事にやり甲斐を覚えるようになってい

    ましたが、とりわけ全国大会に参加すると、全国の様々な機関の取

    り組みやその成果を知る事ができ、「明日から自分も頑張ろう」と

    いう熱い気持ちが沸き起こってきます。実際、実践セミナーで学ん

    だ他機関での具体的な取り組みの一部を、既に自分の所属現場でも

    取り入れていますが、(こんな切り口があったのか!)と、目が覚

    める思いです。そのような意味で、荘厳先生が幹事長基調講演

    「Science basedな実践家を目指してー臨床発達心理士に求められ

    るコーディネート能力」でおっしゃっていた「臨床発達心理士にと

    って、ケースカンファレンスはとても大切です。人の経験を取り込

    むことで、早く成長できます」というお言葉は、本当に真実である

    と思います。第12回全国大会は私にとって、自分一人で臨床に励

    む中では到底思いつかないような新しい発見に満ちた、専門家同士

    の目に見えない「つながり」を強く意識させられる、素晴らしい大

    会でした。私自身、専門家として、また「生涯発達」の過程を生き

    る一人の人間として、これからも精進していきたいと願っています。

     

    最後になりましたが、この素晴らしい全国大会を準備してくださ

    った大阪・和歌山支部の先生方、当日熱心に働いておられた学生ボ

    ランティアスタッフの皆さまに、心からの感謝を申し上げます。本

    当にありがとうございました。

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