日本臨床発達心理士会滋賀支部

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滋賀支部ブログ:いつも同じでいることを大事にしたい ―発達支援に思うー
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    大津市子ども発達相談センター

    佐々木一夫

     

     中学2年、5月の連休がすぎたころ,春子さんは、ある日、学校にいくこ

    とができなくなりました。前日までの学校生活は、何ごともなくいつも通り

    の毎日でしたし、帰宅後も、すこし宿題に時間がかかっていたものの、い

    つも通り時間割をあわせていました。なのに、翌朝は、母親がいくら起こ

    しても、布団を頭からかぶったまま、起きだせなかったのです。

    友だちは、春子さんが休みはじめてからも、毎朝、友だちはいっしょに

    登校しようと、迎えに来てくれました。放課後には、学校で配られた連絡

    プリントなどを届けに来てくれる友だちもいました。授業の空き時間に、

    心配して担任の先生が、春子さんに言葉かけをしようと、家庭訪問に来

    てくれました。

    春子さんは、そうした友だちや先生に、心の中ではすまないと思いなが

    ら、どうしても顔を会わせることはできませんでした。お母さんは、みんな

    が来てくれる度に、「会いたくない」と、春子さんが言っていると,友だちに

    詫びなければならず、とてもつらい気持ちになっていきました。

    ある日、先生はクラスの生徒たちから、質問を受けました。「先生、どう

    して春子は私たちに顔を見せないのか」と。何か顔を合わせたくない理

    由でもあるのなら知りたい、自分たちにできることなら、できる限りのこと

    をやってあげたい、という思いからでした。

    先生は、生徒たちに、春子さんのことをうまく説明することができないだ

    けでなく、先生自身にしても、春子さんが学校を休んでいる理由、みんな

    と顔をあわさない理由について、何ひとつわからず、したがって、なすす

    べは何もなかったのです。

    「私らのなんとか一緒に勉強したり、遊んだりしたいという気持ち、ふみ

    にじるのもいいかげんにしてほしいわ。」春子さんが、学校に行かなくな

    って、1か月が経とうというとき、友だちの中から、そんな声が上がってき

    ました。毎日だった誘いが2日に一度となり,その数も一人減り、二人減

    りとしてきました。春子さんは「こんな風に、自分を思ってくれていた友だ

    ちの気持ちに泥を塗るようなことをしていて,先生や友だちから見放され

    ても当然だ,きっともう一か月もたったら、だれも私のところへなんか来な

    くなるにきまっている。結局、友だちといっても私にとってはそれだけの関

    係でしかなかったのだ。」と思いはじめました。

    それから,さらに一か月たち,ほとんど友だちの訪れが跡絶えた春子さ

    んの家でしたが,毎日、学校での様子や友だちのことなどを記した手紙

    が、京子さんという一人の友だちから届いていました。

    「うれしいけれど,どうせもう一か月もしたらこの手紙も来なくなる。」春

    子さんはそう思っていました。やがて、夏休みになり、すこしだけ、学校や

    友だちのことを考えなくてもすむ時間が、春子さんにもできました。そうし

    た夏休みの毎日でも、京子さんからの手紙は跡絶えることがありません

    でした。

    2学期になっても、依然として学校へはいけませんでしたが、ある日の

    夕方、京子さんからの手紙の封を、いつもと同じように切ろうとした時、春

    子さんは、友だちや先生、家族、あるいは人というものに、漠然とした信

    頼の気持ちが芽生えてきたよう感じました。こんな気持ちは今まで経験し

    たことのないものでした。

    その後、中間試験のテスト範囲の手紙に、どさっと、授業ノートのコピー

    が同封されて届けられました。春子さんは、久しぶりに教科書を手にし、

    学校に戻ろうと思いました。学校に行けば、なぜ休んでいたのか、休んで

    何をしていたのか、どんなことを聞かれるだろう、どんな目で見られるの

    だろうか、いろいろと考えました。

    しかし、学校に行っても、どの友だちからも、何も聞かれません。廊下で

    すれ違った先生が、かけてくれた言葉は、「大丈夫か、今日のテストがん

    ばれよ。」の一言でした。何ひとつこれまでと変わらない、いつもの中間

    テストでした。

    京子さん自身,先生から「春子に、なにがあったんやろな、わからんな

    あ」と、言われても、一緒にうなずくしかありませんでした。けれど、『春子

    が経験したことは、いつか自分にやってくるかもしれない』と、京子は心

    のなかで思っていました。

    心理・発達の支援理論やスキルで「相談支援」という仕事に携わりなが

    ら、「自分のやっていることが、どこまで役立っているか分からない。ひょ

    っとすると役立っていないことがほとんどなのかもしれない。」と、感じる

    こともあります。

    けれど、「むずかしいケースでも、その子どもにまなざしを向け続け、な

    んとか分かろうと、懸命になることはできるのだ。」と、考えることを大切

    にしています。

    | 会員エッセイ | 13:39 | comments(0) | - | ↑PAGE TOP
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