日本臨床発達心理士会滋賀支部

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『聞く』ことと『聴く』こと
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    岡村律(滋賀県立八日市南小学校ことばの教室)

     

     働きだして、15年近くたつ。

     初めての職場は利用者さんの話を『聴く』ことが仕事の一つであった。先輩から「『聞く』ではなく『聴く』ことをしてください」と言われた。

     そもそも『聞く』ことと『聴く』ことはどう違うのか。どちらの漢字にも『耳』がある。しかし、部首が「もんがまえ」と「みみへん」と異なっており、一文字中に占める「耳」の大きさが違う。今、この原稿を打っているパソコンの漢字変換時に提示される辞書には、それぞれの意味が『聞く:〔一般的〕』、『聴く:〔限定的〕身を入れてきく』とされている。

     

     初めての職場は自分の思いをなかなかことばにすることができない人たちと時を過ごす場であった。利用者さんに言われたことがある。「私はあなたに意見を求めていない。ただ、話をきいてほしい」と。自分なりに聴いているつもりが、聞いていたのだ。
     心と頭にズドン!と響いた。その方の思いを聴いて言語化したのではなく、私自身の理解を言葉にしたものを返してしまっていたのだ。それからは「どう思う?」と意見を求められた時に「私は、こう思う」と伝えるようになった。

     

     その後、今の職についた。
     子どもに直接指導をするとともに、保護者に寄り添い少し先の未来を見つめながら今していくことを伝える仕事である。結婚も子育ても経験したことがない私は、子ども寄りになることが多かったが、保護者面談をしていく中で、保護者も悩み、とまどい、立ち止まり、前へ進んで、子どもが年齢を重ねるように、親としての年齢を重ねているのだと気づいた。それは『聴く』ことを繰り返すことで気づけたことである。

     

     最近は『きいてほしい』と面談を希望される保護者が多い。話の内容は、担当している子どもの生活習慣のことから、きょうだい関係、きょうだいの悩みなど様々である。保護者は「何とかしたいけど、何をどうしたらいいのか、わからない」という状態をグルグル繰り返している方が多い。ことばでうまく表現できない方もいるため、気になることを付箋に書いてきてもらうことをする。

     同じ内容でもいいので、付箋一枚につき一つの内容。これを一週間してもらうと、保護者が言いたい内容が出てくる。その内容を詳しく『聴き』、どうすればよいかを一緒に考えていく。その繰り返しをすることで、保護者が前に進むことができ、そのことが子どもへのかかわり方の変化へとつながっていく。保護者自身が子どもの話を『聴こう』とし、子どもにきこうとしてくれるのだ。
     就学直前や就学後に保護者自身が変化に気づくことが多く、その変化が保護者の自信になっているという話もきく。そういう話を『聞く』ととても嬉しい。

     

     元来話をすることが好きな私。

     『聴く』ことが苦手という自覚もある。ついつい言いたくなるのだ。
     それでも『聴く』ことが次の一歩へとつながる。

     

     これからもいろいろな出会いを楽しみに、『聴く』ことをしていきたい。

     

     

    | 会員エッセイ | 09:17 | comments(0) | - | ↑PAGE TOP
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